こんにちは。BASE BANK 株式会社 Dev Division にて、 Software Developer をしている東口(@hgsgtk)です。
XP祭り2020
XP祭り2020は、XPJUG(日本 XP ユーザーグループ)主催のベントです。2002 年から毎年行われていて、今年 2020 年は、9 月 19 日にオンライン開催されました。
今回自分は初参加でした。LT 参加で申し込んでいたので、聴講者 && LT 発表の両方の視点で、参加レポートを書き連ねていきます。
TL;DR
- XP 祭り 2020 に参加しました
- 聴講レポート:『近代史とアジャイル』が面白かった
- 「時を超えたプログラミングの道 "XP はソーシャルチェンジである"」という発表をしました
聴講レポート:『近代史とアジャイル』が面白かった
聴講させていただいた内容、全て面白かったのですが、個人的に好きだった私の個人的ベストセッションが、Fumihiko Kinoshita さんの『近代史とアジャイル』というトークでした。
終盤のまとめスライドを引用しておりますが、2001 年のアジャイルマニュフェスト以前、にこれだけ大きな年表が出てくる話を聞いたことありませんでした。
個人的な興味で、最近ソフトウェア自体ではなくて、哲学・社会心理学系っておもしろいな〜と浅く見回っていて、見回ってみると、ソフトウェア設計などの影にカント哲学やデカルト哲学が出てきます。
それらが歴史年表となって、アジャイルマニュフェストにいたる一枚のスライドに収められた光景に感動しました(そしてこの感動の末、もともと用意していた LT スライドをゴミ箱に入れて作り直し始めました)。
LT発表: 時を超えたプログラミングの道 "XPはソーシャルチェンジである"
当日の Lightning Talk 発表者は、 10 人で 9 番目でした。
実は「当日このテーマにしよう」と決め、事前に作っていた資料は捨て作り直しました。きっかけは、聴講レポートにあげたセッションを聞いて、昼休みに、改めて『Kent Beck, Cynthia Andres. エクストリームプログラミング』(以降、XP 白本と呼称します)を読み返したことでした。
XP まつりの熱を帯びた状態で読み返すと、「あぁ『XP はソーシャルチェンジである』というフレーズはこんな想いが込められていたのか...!!!」と、勝手に感動し、誰かに話したい気持ちが溢れた結果がこちらの資料でした。
"XP はソーシャルチェンジである" という言葉は 2 つの意思が凝縮されていると捉えました(それだけではないとも思っています)。
- 何からチェンジするのか = テイラー主義的組織構造からの脱却
- どこを目指すのか = 生き生きと働くこと
ひとつは、ソフトウェア開発におけるテイラー主義的社会構造からの脱却という意思。XP 白本には、「第 18 章テイラー主義とソフトウェア」という章があります。そこでは、テイラー主義がもたらす社会構造について次のように断言しています。
ソフトウェア開発で問題となるのは、テイラー主義に伴う仕事の社会構造だ。テイラーが提唱した「時間・動作研究」の儀式や道具こそなくなっているが、我々は無意識にこの社会構造を継承しているのである。その社会構造は、ソフトウェア開発にまったく適していない。
そして、どこを目指したのか、という点についてですが、XP 白本には、「第 23 章時を超えたプログラミングの道」と言う章があります。「時を超えた」とくると、ソフトウェアエンジニアの頭によぎるのは、クリストファー・アレグザンダー氏の著書『時を超えた建設の道』です(主語が大きい自覚はちゃんとあります)。
これを読んだ Kent Beck 氏や Ward Cunniungham 氏たちは、クリストファー・アレグザンダー氏のパタン・ランゲージなどの考え方をソフトウェアを適用することを試み始め、現在のソフトウェア開発のコミュニティに馴染み深いデザイン・パターンや XP などにつながっていきます。
その過程で何を目指したのかは、この「第 23 章 時を超えたプログラミングの道」と「第 25 章結論」を読んでいくと、XP の目的・目指したいものが克明に書かれています。
"XP はソーシャルチェンジである" という何やらとらえどころの難しいフレーズも、XP をソフトウェア史上の「点」ではなく「線」で捉えると、その輪郭が浮き彫りになってくるような気がします。
ちなみに、すでに発表しようとして捨てた内容は、以前の開発チームブログに公開しているものでした。「抽象的な話より具体的な『今どうしたらいいのよが知りたいのよ』」派のあなたにおすすめです。
また、最初は XP 白本の書評ブログとして書いていました。発表資料の内容 + 脱線(多め)になっています。
発表内容が、「だれかに話したい!」と言う衝動に駆られたものだったので、どれだけこの個人的な感動が伝わるだろうか、と思ったのですが、コミュニティが暖かく感謝感謝...。
【メモ】XP祭り2020 @hgsgtk さんのLT「時を超えたプログラミングの道 ”XPはソーシャルチェンジである” を読み直す」
— Akapon (@Akapon2010) September 19, 2020
とっても良かったです!https://t.co/vjyuaVFPRs
#xpjug #ChistopherAlexander #Taylor pic.twitter.com/uND3V0A4Ti
ペアデザインを始める過程で「XPはソーシャルチェンジである」という言葉を知って、ぼやっとしか分かっていなかったけれど、急にくっきりした感じある https://t.co/XBHjZHegf6
— Takahiro Hayashi / ぴーや (@taka_piya) September 19, 2020
この発表エモい。広島の河川景観は(原爆スラムを除けば)、まさに市民との対話によって形作られていったことを思い出す。計画プロセスの民主化によって生み出された芝生が広がる護岸は散歩しててとても気持ち良い場所になった。ソフトウェア開発もかくありたいよなと思う。 https://t.co/5IUwmvpNFq pic.twitter.com/P5XmzRdjap
— hodagi (@hodahgi) September 19, 2020
建築の仕事からのアナロジーがソフトウェア開発に活きてくるの面白い🤔 https://t.co/5oTZP3oRz4
— Morito Ikeda (@_moricho_) September 19, 2020
XPまつり 2020 スタッフの方々へ謝辞
XP まつり 2020 開催ありがとうございました。昨今のコロナ禍で、Discord と Zoom を駆使したオンラインとなりましたが、Discord の盛り上がりもあって、XP 祭りの熱にしっかり 1 日巻き込まれて楽しい時間になりました。
この場を借りて御礼申し上げます。
おわりに
そういえば、最近 @seike460 さんが配信されている podcast #46fm
にて、関連話(デザイン・パターン起点ですが)をしていました。
#46fm Podcastを公開しました!
— せいけしろー (@seike460) September 19, 2020
3回目は @hgsgtk さんをお招きしました!
46fm ep.3 「ISUCON10予選、パタン・ランゲージ、Go コーディングリーディング会、社内の小さなカイゼン @hgsgtk」https://t.co/XOUNKssLfq
そちらももし興味がありましたら(初めてラジオ形式で発音しているので日本語がカタコトですがご了承を...)。