この記事はBASE Advent Calender 2019の18日目の記事です。
こんにちは。 Product Management Groupでディレクションを担当している、藤井と申します。
ふだんはネットショップ作成サービス「BASE」やショッピングアプリ「BASE」の新機能および改善のディレクション業務を行っています。
そのディレクションのなかでも、個人的にとくに強い関心を持って取り組んでいるのが「UXライティング」という分野です。とはいえ、「ん、UXデザインってのは聞いたことがあるけれど、UXライティングってなんぞや?」という方もきっと多いのではないでしょうか?
そもそも、UXライティングってなんぞや?
UXデザインを「グラフィックによってユーザー体験をデザインすること」と定義するならば、UXライティングとは「テキストを設計することによってプロダクトとユーザーのコミュニケーションをデザインすること」と定義されているようです。つまり文章を最適化することによって、何を伝えようとしているのかがストレスなく伝わるようにする、いわばテキストによってコミュニケーションをデザインすること、なのです。
(※参照 「シリコンバレーのUXライターが語る、UXライティングの重要性」参加レポート)
UXライティングに興味を持ったきっかけ
自分たちが世の中にECのプラットフォームを提供している、というのはさておき。日常的にネット上で買い物をするのが当たり前になってきているなか、たとえばお問い合わせは電話ではなくメールやチャットで行っていたり、結局は商品の写真と紹介文で判断していたりと、直接のやりとりではなくテキストでのやりとりがほとんどになってきています。だからこそ、文章の意味が理解できなかったり、敬語がおかしかったり、そもそも日本語が怪しかったりするサイトでの買い物はためらってしまいます。つまりテキスト・コミュニケーションもデザイン同様、コミュニケーションのための必須要素であり、トンマナ(トーン&マナー・一貫性のこと)とはテキストのデザインでありUXなんだなあ、と。そんなことを考えているうちに、がぜん「BASE」におけるテキストのあり方が気になって仕方なくなってきたのです。
時代背景からも見て取れる、テキスト重視の機運
でも、そんなことを考えているのは自分だけ?なんて思いつつ、「UX」「テキスト」なんてキーワードであれこれ検索してみると、同じようなことを感じている先人は数多くいたようで。
「『なぜUXライティングが必要なのか?』答えはシンプル、『Words are everywhere』、つまり『言葉はいたるところで使われているから』」
「マネジメントはマネジメントの言葉、エンジニアはエンジニアの言葉、PM、デザイナーなどプロダクトに関わるメンバーが、各々の価値観をベースにした異なる言葉をプロダクトに注ぎ込んでしまうと、ユーザーの体験は断片化され、プロダクトのあちこちにに矛盾が生じる、ユーザーはまるで様々な方向から沢山の人に話しかけられているような感覚に陥り、混乱してしまう」
「洗練されたワードほど自然で違和感を与えない、結果としてユーザに意識されない。ビジュアルを作るとき、無駄のないデザインほど難易度が高いのと同じ」–All Turtles/Jessica Collier
「私たちが触れる様々なプロダクトやサービスは多くの“言葉”で構成されていますので、肝心の言葉を後回しにするなんて間違っていました。ことさらAI時代においては、プロダクトとのコミュニケーションが会話形式で行われるなど、“言葉”はますます重要な要素になるはず」 –All Turtles CEO/Phil Libin
(※参照 All Turtles 創業メンバーが語る、UXライティングの重要性)
かくしてデジタルプロダクト市場が成熟し、よりよいユーザー体験が求められるなかで、言語表現にもボトルネックが存在していることは明らかなようで。2010年代中盤からは、デザインプロセスにおいて言葉のデザインを重要視する流れも実際に起きはじめているようです。なんでもGoogle, Spotifyなどの企業では、“言葉”のプロフェッショナルをデザイン・チームに加える、という取り組みもすでに生まれているのだとか。
「BASE」におけるUXライティングって、どうあるべき?
では、「テキストを設計することによってプロダクトとユーザーのコミュニケーションをデザインすること」って、じゃあ具体的にどんなことをするの?というと、シンプルにまとめると次の3つに集約されるように思います。
- ユーザー体験をロジカルに分析すること(どう言われると、どんな感情を抱く?)
- 課題を見つけること(言いたいことが、額面通りに伝わっている?)
- 言葉をブラッシュアップすること(言いたい、ではなく伝えたい)
そして「BASE」にとってUXライティングのあるべき姿としては、現段階ではこんなふうに考えています。
- 「BASE」というプラットフォームに接するときに目にするワード構成を設計(誰が/どこで/どのように使うのか)する
- それによって、プラットフォームとショップオーナー様/お客様の間のコミュニケーションをデザインする
書き出してみるとなんてことないことかもしれませんが(ごめんなさい!)、じゃあ実際にできているかというと、取り組みはじめて約1年、目指すべき場所はまだまだずっと先にあるように思えます……。
いま「BASE」が取り組んでいる、UXライティングにおける具体的アクション/視点
そんな「BASE」が現在取り組んでいる、UXライティングにおける具体的アクション/視点とはどのようなものか、その一部をご紹介します。
- 用語リストを作成/運用する
→誰もが参照できる用語リストを作り、プロダクト内に言葉の矛盾が起こるのを防いでいます。
- 既存の言葉を使う
→ユーザーがふだん使っている言葉に合わせるべきであり、すでに理解されている表現があるときに、いたずらに新しい言葉を作り出さないよう心がけています。
- ダミーテキストを使わない
→デザインするさいにダミーの文章を流し込まず、最初から限りなくリアルなコンテンツやテキストを当てることで、UXが迷子にならないようにしています。
- 設計を修正するごとにコンテンツも修正する
→デザインと同じく、ライティングの大半は下書きと修正であり、削り落とす作業だと考えています。
- 形を機能に従わせる
→美しさ<機能。言葉のほうが伝わるのか、画像のほうが伝わるのか、目的達成のために効果的な方を選んでいます。
- ゴール・オリエンテッドである
→その画面において必要な情報のみを、その都度提供するようにしています。
これから
というわけで、「BASE」のUXライティングの取り組みは、まだまだはじまったばかり。社内にもその必要性/重要性を懸命に訴えつつ、ひいては「BASE」というプラットフォームを使ってくださるショップオーナー様/お客様の体験を、さらに一つ上のステージへと導きたく日々格闘しています。すべてはわかりやすく、正確に、そして行動できるようにーー
「The details are not the details. They make the design」 – Charles Eames(チャールズ・イームズ/デザイナー)・神は細部に宿る
(※参照 https://www.brainyquote.com/quotes/charles_eames_169188)
ーーそう、細部への気配り(一つひとつの言葉選び)だけがプロダクトに差をつけると、「BASE」は本気で信じています。
明日はFrontendの松原さんと、Native Applicationの小林真さんです!