この記事はBASE Advent Calendar 2021の14日目の記事です。
こんにちは。UIデザイナーのノムラ(@nomjic)です。2021年の初め頃にデザインリサーチPJを開始して、3〜4名のメンバーでここ一年間、定性リサーチにトライしてまいりました。その内容を本記事に書いていきたいと思います。
デザイン業務の傍らで実施した活動につき、リサーチ内容の深度・精度はいささか低めです。すでにがっつりリサーチに取り組んでいる方よりも、「定性リサーチ活動を始めようとしている人、始めたいと思っている人」にとって参考になる記事にできたらいいなぁと思いつつ、書かせていただきます。
デザインリサーチとは
我々の行っている活動を「デザインリサーチ」と呼んでいますが、定性リサーチ、UXリサーチ、ユーザーリサーチ、といった言葉に読み替えていただいても問題ありません。ゆくゆくはプロトタイピングやユーザビリティテストも取り入れていきたいと思いますが、現状では「ユーザーにインタビュー調査をしていろいろ実態を探っています」という一言でほぼ言い尽くせるリサーチ活動です。
以前に書いたブログ記事で私の思うところの「デザインリサーチとは」を述べていますので、ご興味お有りでしたら併せてお読みいただけると幸いです。
今年実施した内容・概要
4つのリサーチを行いました。1回のリサーチで数名〜10名弱の方からお話を聞いています。
インタビュワーや書記役は主にPJメンバーが行っていますが、他の社内メンバーに参加してもらうこともあります。
「まずはユーザーとデザイナー(およびPM、エンジニア)が対話する場を作ろう」という形で動き出し、得られた知見を蓄積しつつ、なるべく多くのメンバーを巻き込んで社内に定性リサーチ文化を醸成する、ということを目指してきました。
実施した4つのリサーチについて、以下、概要を述べます。
リサーチその1 「まずは話を聞こう」
リサーチ内容
2021年 2月にインタビューをし、3月にかけて分析をしました。9ショップ・10人のBASEショップオーナーさんから話を聞いています。アパレル系、雑貨系、食品系などさまざまなジャンルのショップから話をお聞きしました。
※ インタビュー設計や分析の流れは、以前の記事に書いたデザインリサーチワークショップの内容に沿っています。
所感
特に仮説等を立てずに「とにかく話を聞いてみよう」と始めたリサーチだったため、得られた成果は少々散漫というか、どう活用するかをイメージしづらいものでした。
とは言え、何はともあれ「ユーザーに連絡して日程調整し、話を聞かせてもらって分析し、社内に報告する」という一連の流れをデザイナー主導で行えたというだけでも、一つの大きな成果であったと思っています。
リサーチその2 「属性ベースでセグメント切って深掘り」
リサーチ内容
2021年 5月にインタビューをし、6月にかけて分析をしました。7ショップ・9人のアパレル系BASEショップオーナーさんから話を聞いています。
所感
「インタビュー対象の絞り込み(アパレル限定)」「質問項目の具体性アップ」を行うことで、1Qで得られた成果に比べてより具体的・実用的な情報を得られました。
基本的には「その1」と同じ流れでリサーチを行なったため、だいぶスムーズに一連の流れをこなせています。また、この回ではリサーチPJの外部に協力者を募り、他職種メンバーも巻き込んでいます。(インタビュワーや書記を行ってもらいました。)
リサーチその3 「退会したユーザーとも話してみよう」
リサーチ内容
「その2」と並行して、2021年 6月にインタビューと分析を行なっています。BASEから別のECサービスへ移転した3名のショップオーナーさんからお話をお聞きしました。
このリサーチではいくつか仮説を立てて臨みました。結果、かなり具体的で、開発に役立ちそうな情報を得ることができています。
所感
BASEにマッチしなかったユーザーからも意見を集めたい、という想いから実施した「退会したユーザーへのインタビュー」だったのですが、実際に話を聞けた3名は「一度BASEから移転したが、今はBASEに戻ろうとしている」という人たちでした。非常に参考になるお話をたくさん聞けたものの、いささか偏りの大きいリサーチになってしまいました。
リサーチその4 「関心ごとベースでセグメント切って深掘り」
リサーチ内容
2021年8月にショップオーナーさんの関心ごとを問うアンケートを行ったのち、アンケート回答者を対象に 9月にインタビューをし、10月・11月にかけて分析をしました。アンケート結果から「集客・広告に強い関心を持っている」と解釈できる9ショップ・9人のBASEショップオーナーさんから話を聞いています。
所感
このリサーチでは、「傾向」と「課題」の2つの観点で、得られた情報をまとめています。 リサーチも4回目ということで、インタビューおよび分析はだいぶスムーズになってきました。反面、「得られた結果が開発に役立つか?」という面ではまだ不十分である感は否めません。
「その2」同様、この回でもリサーチPJ外からの参加者を募っており、より多くの社内メンバーに定性リサーチを経験してもらえました。
定性リサーチ結果を、どう開発に役立てるか
リサーチ結果・知見の社内シェア
この一年間で行なったリサーチで得られた情報(議事録、録画データ、インサイト)はスプレッドシート上に一覧表の形でまとめて、社内でシェアしています。また、上記「その1〜4」のリサーチごとに報告会を行うことで、口頭による社内へのシェアも行なっています。
リサーチその2、その4ではリサーチPJ外のメンバーにもインタビューに参加してもらっており、直接的に定性リサーチを体験してもらう形で、ユーザー実態に触れてもらっています。
このように、
- シート(ドキュメント)に情報を蓄積する
- 報告会を実施して知見・成果をシェアする
- 直接参加して体験もらう
という3つのルートで組織内にアウトプットしているのですが、この3つの中で「直接参加」が圧倒的に意義が大きい(学びが深い)というのが、リサーチPJを率いている身としての本音だったりします。
ドキュメントや報告会では全然伝わらないナマの実態というものがあり、それはプロダクト開発へのマインドにも大きく影響する、と思っています。
(これってライブイベントみたいだなぁ、と思って書いたnote記事などもありますので、ご興味あったらお読みいただけたら幸いです。)
「直接的な体験」と、「蓄積したドキュメント」のバランス
直接参加してもらうのが一番学びが深いのは明らかなのですが、現実に「社内メンバーみんなに参加してもらう」というのは流石に無理があります。(その状態を目指したい、という想いはあるのですが)
どうしても参加者が特定のメンバーに限られてしまいます。
組織で活動する以上、その活動の成果は蓄積して「新規メンバーでもアクセスできるように」「当時の担当者が不在でも活かせるように」しなくてはいけません。
いわゆる「属人化を避ける」というやつですね。
なので、直接参加してもらって体験してもらうだけでなく、ドキュメントや映像のような、後から第三者がアクセスできる形で蓄積していかなくてはいけません。
落とし所としては、以下の2つを交互に行うのが良さそうかなと思っています。
実態探索型リサーチ
なるべく社内メンバーを広く巻き込みつつ、ユーザーの実態を探るインタビューを行う。
直接的にプロダクト改善に寄与する情報を得ることよりも、「ユーザーを知ること」「ユーザーと対話すること」に重きを置く。仮説検証型リサーチ
具体的な仮説を立てて、インタビューにより仮説を検証する。
ユーザーを知ることよりも、プロダクト改善につながる情報を得ることを重視し、ドキュメントとして社内で共有した際に共感や納得感を呼び起こせる、プロダクト開発メンバーの行動につながりやすいアウトプットを目指す。
そもそも、リサーチ活動の在り方として
現在のデザインリサーチPJは、開発PJや企画PJとは独立した形で、ユーザー実態情報の収集とリサーチノウハウの蓄積を行っています。
この状態では、プロダクトの直接的な改善には繋がりにくく、そのためプロダクトを良くすることに心燃やしているBASE社員たちの関心を集めづらいです。リサーチ活動への参加を促したりリサーチ成果の共有を行っても、期待したほどの反響は得られません。
開発PJや企画PJの内容を鑑みて、それらを評価・検証するような動きをするとか、それらPJの発足の手前段階で関わっていくなど、リサーチ活動の在り方そのものを考えるべきでは?という想いもあり、検討をしているところです。
まとめ
いろいろ書きましたが、今の活動形態での良き成果を目指しつつ、活動形態や体制の在り方を検討(MGRと相談)して、より質の高いリサーチ活動を行っていきたいと考えております。
以上です!最後までお読みいただいた方、ありがとうございます。
明日のアドベントカレンダーはフロントエンドエンジニアのkushibikiさんの記事です。お楽しみに!