BASEプロダクトチームブログ

ネットショップ作成サービス「BASE ( https://thebase.in )」、ショッピングアプリ「BASE ( https://thebase.in/sp )」のプロダクトチームによるブログです。

リモートワークの弊害は職場でのよい思い出が作りにくいこと

こんにちは。BASEの藤川です。

緊急事態宣言も続く状況下で、当社もリモートワーク(Work From Home)中心の仕事の進め方をしています。ネット系企業は、幸いにしてVPN、Slack、GitHubやドキュメント管理ツール、その他仕事に必要なSaaSやZOOMがオンライン化しているため仕事の作業そのものは、それほど違和感なく自宅からでもできているのではないかと思います。

でも、仕事というのは作業だけで済むものではありません。業績を上げるための作業を生み出す活動を始めとする考えるタイミングであったり、不確実なものを埋めていくためにお互い議論するタイミングなど、曖昧なプロセスの先に、決定をして作業の的を絞り込んでいくプロセスが不可欠で、ここで複数人のチームワークが不可欠です。

今、一緒に仕事をしている仲間においては、コロナ以前から社内で人間関係を構築済みの人と、コロナ禍においてリモートだけで人間関係を構築している人と二分されています。当社の採用活動でも緊急事態宣言が出てからは、オンラインコミュニケーションのみで内定を出しておりますた、他部署の方などで最短で退職されてしまうと、せっかくそこまで大きくない会社にも関わらず一度も会うことなく去ってしまう人もでてくる可能性があるという状況です。

そのため一日でも長くいただくために、入社される方へのオンボーディングおよび心理的安全性、チームの信頼関係の構築に対するケアは、マネジメントにおいても最重要項目として常に議論をしています。

そもそも、オンラインコミュニケーションにおいては何が足りないのだろうか?と思っていたのですが、一言でいうと、

良い思い出を作るイベントが圧倒的に少ない

ではないか?という事を考えています。

オンラインコミュニケーションで起きていたことが職場でも起きる時代

僕は高校一年生の頃からパソコン通信をやっており、オンラインのコミュニケーション経験は長いです。オンラインではパソコン通信でも、その後のインターネットの世界においても、新しいネットワークが大きくなる時に、必ず見かけてきた風景として、

オフ会によって人間関係の距離が変わる

オフ会を開催して、誰かと誰かが仲良くなって重鎮化していき、ある種の既得権みたいなのが生まれ、また新しい人が入ってきて新しい関係性が生まれる、常に人間関係のシャッフルが生まれ、コミュニティの歴史が長くなってくると、必ず起きる問題が、

新参者が入れない問題

というのが起きます。

よく組織設計の話で、ダンパー数というものが語られることがあります。

・5~9人=「社会集団(クリーク)」…最も親しい友人やパートナーの数

・12~15人=「シンパシー・グループ」…ほぼどのような状況下でも心から信頼できる人の数

・30~50人=「一団(バンド)」…危険な国を安全に往来できる小さな団体

・150人=「フレンドシップ・グループ」…共同体の中で一緒に暮らすのに最適な人数

・500人=「部族・種族(トライブ)」…出会うと会釈する程度の顔見知りの人数

・1500人=「共同体(コミュニティ)」…人間の長期記憶の情報数の限界、頭の中で名前と顔が一致する人数

出典:チームを成功へ導く魔法の数字たち 「7」「30~50」「150」 https://www.sankeibiz.jp/smp/workstyle/news/190401/wsa1904010700003-s4.htm

ダンパー数は組織の人数規模を考慮する時に参考にする数字なのですが、肌感覚としても一致はしていて、小規模のコミュニティにおいては、お互いの距離感は均等に短く、何もしなくても親密になりやすいです。これが人数が30〜50人であるとか、100人を超えてきて、なおかつ参加したタイミングがバラバラともなれば、相互の距離感が不均衡になりがちです、そして、不均衡が生まれれば生まれるほど、既に存在する人間関係や情報の非対称性の中で孤独感を感じる人が出てきます。

特に何十人の規模のオフ会ともなると、人脈を持つものと持たざるものの差は大きく、また、それを切り開くだけのコミュ力や、そのコミュニティで名を売るんだぞ!という根性を持ち合わせていないと、家に帰った後にどっと疲れて、このコミュニティは内輪ばっかりで、疎外感に満ちあふれていたなどの言説が駆け巡ってトラブルになることを、この目で散々見てきました。

こう言ったことが、SlackとZOOM主体のリモートワークの働き方においても適用されるのではないかと考えています。

以前入社した100人ぐらいの会社が、実は1000人以上のグループの一社だったということを入社日に参加したグループ全体の定例会議で知ることになり、なんか大企業に来ちゃったなぁということに疎外感を得たことがあります。自分のアクセス可能なネットワークと、手の届かない全体感の規模感のギャップというのはストレスを感じるという経験をしたことがあります。

そのような会議の後に、心の支えになるのは隣の席の同僚だったり、同期入社した人だったり、即座に小さなコミュニティを構築し、雑談をすることが心のクッションになったりします。

しかし、コロナ禍においてフルリモートのような状態で働くと、自分の部屋でパソコンを閉じても、隣の人と雑談をして共通見解などの意見を交わして、息を抜く所がありません。まして真面目に自粛していて、外にも全く出歩かない独身の方だと、プライベートのネットワークが補完することもできず、どうにも仕事モードを発散できないような人もいるのではないでしょうか。

職場で「何も考えずとも」得られていたもの

そういう時に起こりうる疎外感や寂しさと言った無用な感情を埋めてくれる存在は、同じ部署のメンバーやプロジェクトのメンバーなのですが、まだ人間関係ができていないと難しいですし、仕事の中で培われるというよりは、一緒にランチに行く時に路上やエレベーターで会話するシーンや、タバコ部屋の議論とか、仕事の隙間に培われていいた何かというのは確実にあったような気がします。

このようなタイミングで培われるものを「遊び」と定義してみます。

仕事は何かの目的を持って、無駄なく最適化された活動をすることが生産性が高いと表現されます。それが有能な会社員の行動であれば、無駄を許容することはその逆になるので、一人でやるのは難しいです。

Slackで雑談するにしても、相手にしてもらえる人がいればこそ。まして、一緒にタバコを吸いに行くとか、コーヒーを飲みながら雑談するとか、仕事終わりに飲みに行くなど、最適化された活動以外のものは、概ね気の合う数人レベルのマイクロコミュニティとして行われるものではないでしょうか。

ZOOMの活用で、会議室の移動は一瞬でできるようになり、仕事そのものは大変効率化されました。時間ギリギリまで会議していても、10秒後には次の会議室に入ることができ、我々は仕事マシンとして仕事をし続けられるようになりました。その一方で、移動のタイミングで生まれていた、アジェンダのない会話 = 「遊び」は消え去りました。そこで副次的に得られていた相手との心理的安全性や、仕事をする意義みたいなものを学ぶために、実は大切なものではなかったのか?というのが仮設になります。

更に、この会社で働いてよかったこと、自分の成長につながったなぁという手応えは、なんだかんだと新機能のリリースイベントであったり、会議室での議論でのお互いの顔の表情であったり、ホワイトボードに書いたものという手触り感、プロジェクトの打ち上げでの会話、メンバーの笑顔など視覚情報によって脳内に記憶が定着され、それ故に実感を得られていたのはないか?と思うことがあります。

この思い出こそが、10年後20年後に振り返った時に脳の中に残っていることが人生にとって大切なのではないか?

残念ながら、これはZOOM上のバーチャル背景の集合体では得られにくいのではないでしょうか?この1〜2年で働いていたことは人生の記憶やストックとして積み上がるのだろうか。

このような実感を得られるイベントを、オンライン主体の変わりなき日常風景の中で、どうすればみんなが実感できるのだろうなぁというのを常に考えています。何か工夫をされている会社さんやマネージャの方がいたら是非教えてほしいです。

オンラインで「仕事の思い出」は生み出せるのか

コロナ以前であれば、合宿、社内イベント、飲み会などは、それらを補完し、思い出を業績に変えていく装置だったように思えます。打算的に言うと、あえて遊びを作ることで、仕事の生産性を生み出す装置であったという見方ができます。

組織を語る表現において、歯車というのはネガティブな表現とされますが、歯車と歯車の間には遊びは必要だし、それらが適切に回って全体が駆動されなければ、そもそも良いプロダクトは作れないのです。

こう言った遊びの構築を、それをオンラインでは補完できるのだろうか?

間違っても、その処方箋はZOOM飲みではないなとは個人的な感覚としてはあるのですが、無駄や行間をあえて作って、そこから何かを生み出していくというのは、全員に高度なネットリテラシーが問われるようにも思えます。

もしかしたらヒントは、ツイキャスや17LIVEのようなライブ配信の関係性にあるのかもと思わなくもないのですが、とりあえず今回は、Youtubeの動画を作ってみて、こういう考えを深めるきっかけを作ってみました。

こちらの動画は、採用候補者の方にBASEを検討する際に見ていただきたい動画として、BASE社におけるPHPの現在・過去・未来というタイトルで作っています。今回は、当社の社員として活躍いただいているyakkunへのインタビューという形で収録したのですが、更に、最後のサイドトークに今回のリモートワークについての話にも言及しています。

www.youtube.com

今後も当社のメンバーとこのような会話を公開用のコンテンツとして作っていくことで、1on1とはまた違った思い出が作れないかと思って作っています。全社員できるかな?!

今回の内容は「最近は他の言語がメインにしてきた人がBASE社でPHPを使う気持ち」という長く続くことに成功したサービスに携わる人達であれば共通の経験がある話をしています。

ラジオ感覚で聞ける話ですので、もしよかったら是非見てみてください。