BASEプロダクトチームブログ

ネットショップ作成サービス「BASE ( https://thebase.in )」、ショッピングアプリ「BASE ( https://thebase.in/sp )」のプロダクトチームによるブログです。

新人技術系マネージャを採用脳にする

こんにちはBASEの開発担当役員をやっている藤川です。この記事はBASEアドベントカレンダーの一日目の記事です。今年もよろしくおねがいします。今年のスケジュールや去年までの記事に興味がある方は是非こちらをご参照ください。 

devblog.thebase.in

2021年のアドベントカレンダー一記事目には、個人ブログで好評を得た「新人エンジニアリングマネージャを採用脳にする」を会社のブログ記事に書き換えて再配信したいと思います。

タイトルをエンジニアリングマネージャではなく、技術系マネージャとタイトルを変えているのは、2021年末時点の当社の組織において、EM(技術チームのリーダー)とグループマネージャ(EM of EM's)と2段階に構成されていて、現状、この記事で論点としているスカウトなどの重い採用活動はグループマネージャが担っているという状況があります。EMはよりプレイングな側で活躍してもらってることが多いです。

f:id:f-shin:20211130165557p:plain

上記が抽象化した組織図ですが、緑色の部分がグループマネージャで、BASE事業を構成するKPIなどを元に目的別に分解をした事業ドメインのチームと一緒に動く開発チームになっています。(事業ドメイン側には、この人のエイリアスが存在していてOKRが共有されている)ある種、事業ドメインのVPoE的な役割を持っているのがグループマネージャです。本記事の対象はこのポジションの人になります。

こうすることで、Service Devと書いてあるエンジニアリングセクションは、採用、人材育成、組織構築を中心にサービスを向上するための開発目標の達成とサービス性維持を行うことをマネジメントしている組織ツリーと定義づけています。多くの会社だと採用を担う技術系チームはrecruting側に寄せたりしますが、我々はメンバーの採用、育成に責任を持つことこそが技術系マネージャの最重要課題だと定義して、技術チームの組織ツリーは構成されています。

BASE社に入社したエンジニアは、最初に藤川とCTOの川口と二人で技術に関するオリエンテーションを受けているのですが、そこでもマネージャが採用をやっているという話をしますが、よくよく考えるとマネージャが採用をやっているというのは、あまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。昨今のネットのスタートアップ企業のCTOやマネージャ経験がある人なら当たり前になっていますが、他の業種やSIer、新卒採用を会社でやっている大企業などに関わった経験がある方だと、どちらかというと人事が人を集めてくるというイメージがあり理解し難い部分もあるかと思いまして、その活動の意義をできるだけ知ってもらおうと思って話をしています。

マネージャがスカウト行うメリット

マネージャがスカウトを行う理由は、チーム組成を担う仕事として、プレーヤよりもマネージャの方が主体的に動けること、人を見る目を養っていく仕事が故に、良い人材へアプローチできることを意識してやっています。スカウトは、こちらが先んじてスクリーニングしているが故に、やはりエージェントさんの紹介よりもチャレンジングな人選も含めて人のマッチ率が高い、つまり、面接通過率が高いという特徴があります。

一方で、一言でマネージャと言っても、ずっとマネージャをやってきた人もいれば、ちょっと前までプレーヤーとして活躍して、マネジメント職について経験が少ない人達もたくさんいます。成長前提の組織においては、どこかしらどこかの役割において新人さんがいて、マネージャも例外ではなく、育成、成長を前提とした目標管理をしないと、ただそこに人がいるからと言って、特定の仕事に対して一人前のパフォーマンスを出せるわけではありません。

スカウトを行い面接を通じて人を採用するためには、テクニカルなノウハウは必要で、一例でいうと、

  • レジュメ等の限られた情報からの人選(見抜く目やマネジメントに自信がないとチャレンジできないかミスマッチを生む)
  • スカウト文面の書き方
  • カジュアル面談や面接で聞くことの質の向上
  • 我々の事業に共感してくれるアトラクトメッセージを洗練させる
  • 人の特徴を知り、一緒に働ける人材であるかを見極める
  • 採用する人の成長の道筋を見極めて、給料をあげていける人材か?それをうながせる相手であるかの覚悟ができる

などなどがあります。

これはこれで重要で、実際に採用活動をしながらrecruitingチームと振り返りを行うことで精度を高めていきますが、とはいえ、PDCA的に採用の質をあげていくためにもある程度、スカウトを行い、カジュアル面談を実現し、ある程度、その人にとっての成功、失敗事例が存在してからが、この改善のチャンスだとも言えます。

よく経営者が話がうまいのは、社員、パートナー、投資家に話をする場数をこなしているからだと言われますが、採用も場数が重要です。コミュ力は生来備わってるものではなく、対話しながら培うものです。

なにより、エンジニア採用にあたって同じ目線で話すことができるのがエンジニアリングマネージャが採用に携わる理由と言えるでしょう。これまでのキャリアと自社のドメイン知識を活用しながら、やってほしいことをマネージャとしての責任を持って言葉として伝えていくことこそが内定承諾につながるわけです。

マネージャのマインドセット問題

そのためにも、まずは場数をこなしながら人をアトラクトするスキルを改善していくことが、本人の成長の早道となっています。しかし採用活動初期においては、まず、この採用活動の速度を出すのがそもそも大変だったりします。

当然、マネージャ職ですから時間の使い方は本人に委ねられているわけですが、それまで開発のプレーヤーとしてやってきているが故に、特に新人マネージャは、それまで目を配ってきた開発のことサービスのこと、そして、新しく始めたメンバーのマネジメントにマインドシェアを持っていかれがちです。ざっくり言うと、こんな脳内構成になっているでしょうか。

f:id:f-shin:20211130164335p:plain

もっと明確にセキュリティとかサービスのパフォーマンスというキーワードを入れても良かったかもですね。僕たちは日常起きうるアラート対応が24/365で最優先にマインドシェアに存在していますよね?その時点でマインドシェアにゲタを履いているわけです。

これらをどうにかこうにか整理しながら、以下のように持っていく必要があります。

f:id:f-shin:20211130164353p:plain

僕自身も以前CTOとして働いていた時でさえ、この状態に持ってくるのに苦労しました。

とにかく、採用活動が重要なタスクであり、チームを成長させる道筋なんだ、ということを体で理解するためのフェーズが存在します。ある種プレーヤーとしてのマインドセットをアンラーニングするプロセスが必要で、それが数ヶ月は必要です。組織の役割を整理し、自分の言葉で人を採用できるようになるまでに、人によっては半年ぐらいかかるのかもしれません。

僕の場合は、社長との1on1で、このことを言われまくって少しずつ心の中の自覚を持っていったという流れがあります。今の組織では、私であったり、セクションマネージャが担います。テクニカルな採用スキルは並行して身につけていくものの、このマインドシェアが実現できてなければ、すべては掛け算はゼロになり採用は実現できません。

僕の実体験としても、コードを書くために深く深く集中している時に違うタスクを振られるのは非常に苦手でした。一言でいうと不快になります。プレーヤとして技術に向うのが縦方向に深く集中するベクトルだとすると、人に会って面接をするのは、我々の取り組みについて表現可能なことを、心を平面方向に広げながら会話するという感じで、直行したイメージを持っていました。以前は面接の時間が来た時のスイッチングコストに苦労した時期もあり、そんな辛い思いをするならばと、段々、コードに向き合うのをやめていきました。プレーヤーとしてのマインドセットをまるごと他の人に任せていくことにしてマインドシェアの隙間を徐々に開けていったわけです。

採用活動をマネージするために

それまで自身の強みとしていたプレーヤーとしてのエンジニアという仕事は、ものすごく細かいところに目を見張って、不具合発生可能性というリスクに目を向け、その改善に集中するというのをコードで表現するのがスキルセットであったりもします。自分自身も正直、採用なんてやったことなかったし、自分の得意な仕事でもなんでもないし、もっとコードやプロダクト開発、運営に集中したいと思ってしまいますし、実際、それを求めてフリーランスになる人もいてもいいぐらいのキャリアとしても大きな分岐点だとも思います。ただ、どうにかこうにか頑張って、組織が大きくなって、そこで活躍している人たちが増えてくれると、それはそれで楽しいものです。

人がいない時は、ただただ人がいないという前提に基づいた悩みしかないですが、人が増えると、コミュニケーションに関するいろんな問題や軋轢が増えたりして、今度は問題が起き続けるという状態になりますが、そっちの方が考えられることが増えて楽しい状態になったりします。

何より自分よりも優れた人材や成長期待の高い人材に自社のビジネスに共感してもらい、人材への投資の形で採用を実現し、プロダクトの質をあげ、ビジネスの成功につなげ、チームメンバーのさらなる成長や期待値のアップに連動する昇給を実現することで、自分自身の報酬自体もあがるという構図が作れます。

それまでのキャリアとは非連続な活動を求められて大変な仕事だなと思います。マネジメントに求められる、組織を作る、開発進捗の実現、採用の実現というのは、それまでやっていた要件から仕様を積み上げて実現可能性を確保するという、技術力を下地にコンピュータをロジックで制御するためにコードを書く仕事とは違って、対人に対して不確実性を御す仕事であると考えてみると、共通点が見えてくるというものではないでしょうか?

最後に繰り返しにはなってしまいますが、若手をチャレンジングに重用することも、他社での経験者を我々のスピード感にあわせてもらう(もしくは周囲がついていける形で引っ張ってもらう)のもマネージャの重要な仕事で、それを実現するためには技術力を下地にしたコミュニケーション力が必要です。採用する技術者のキャリア形成に責任を持つことは紛れもなく技術者だからこそできる仕事であること、35歳定年説で語られた「管理職」などという、どこか静的で収まった役割になるのではなく、常に動的に組織を構成していくために自分自身の成長を伴ったクリエイティブな仕事であるということを知っておいてもらえると助かります。