この記事はBASE Advent Calendar 2021 23日目の記事です。
こんにちは。 UXライターの藤井です。
ふだんは、BASEプロダクト全般におけるテキストの品質を向上させる、UXライティングを担当しています。「テキストコミュニケーションをデザインする」をキーワードに、テキスト版デザインシステムとして「運用ガイドライン」「用語リスト」を作成、タッチポイントごとに担当を分け、最終レビュー担当者をそれぞれアサインし、運用しています。あらゆるタッチポイントにおいて、日々テキストコミュニケーションの最適化を図っています。
トンマナ≠UXライティング
この取り組みのなかで見えてきたのが、こんな2つの課題でした。
- トンマナ(トーン&マナー)をひたすら磨く作業が、現状のテキストデザインの大半を占めていること
- 運用ガイドラインがあっても、品質の担保は、最終的にはどうしても属人的にならざるを得ないこと
つまり、たくさんのショップオーナーの皆様が利用するプラットフォームにプロダクトが育っていく課程において、表面的にはトンマナが統一されていることで、一定のテキスト品質は担保されている一方で、UXライティングの本来の役割である「テキストを設計することによって、プロダクトとユーザーのコミュニケーションをデザインすること」、つまり「体験をデザインすること」という本質に、あまり時間を割けていないのでは、ということに気づいたのです。
品質の担保を前提に、本質的な「体験のデザイン」へ
この次なるテーマと向き合うにあたり、必要になると考えたのが、「テキスト入力支援ツール」の導入でした。いくら洗練され磨き上げられた「運用ガイドライン」や「用語リスト」があっても、それはあくまで必要なときに紐解く「逆引き辞典」のようなもの。漢字の閉じ開きや記号、正式名称のBASEルールは、そもそも暗記するような類いのものではありません(さすがに何年もトンマナを整えていると、ほとんど身体に染み付いてはいますが)。あらかじめ定義されたルールに則していないものを指摘し、自動的に修正が加えられたら、あらゆるチームから「プロダクトに反映させたい」と提案されるテキストの品質は、すくなくとも「トンマナ」という文脈においては、その時点で担保されます(もちろん、完璧にではないとは思いますが)。これにより、「体験をデザインすること」ーーテキストのターゲット/目的/ゴールを定義し、情報の構成を設計し、マイクロコピーをライティングする、というプロセスに、さらにていねいに取り組むことができるのではないか、と。
入力支援ツールの導入検討、ガイドラインのアップデート
そのために取るべきアクションは、2つあると考えています。
- テキスト入力支援ツールの選定と導入
- 正誤の参照先となる「運用ガイドライン」「用語リスト」のDB化
まずは、現状のプロダクトやレビューフローとマッチするツールのメリット/デメリットの調査と検討。また、導入にあたって、エンジニアチームにどのくらいの稼働が発生するのか。
「textlint」や「文賢」をはじめとして、すでにけっこうな数のサービスがリリースされていて、インターフェースやできることがそれなりに違うので、導入に向けてあれこれ調査しつつ、現在先行して作業を進めているのが、もう1つのアクション「運用ガイドライン」「用語リスト」のDB化です。
BASEがUXライティングというアプローチを取りはじめてからおよそ3年、昨年もご紹介しましたが、ユーザー体験全体を通して語られる、ブランドの理念を反映した言葉遣い(ボイス)、ユーザー体験の各部分における言葉遣いの変化(トーン)のたたき台も形作られ、それなりに育ってきてはいるのですが、「運用ガイドライン」は目的や対象範囲などがまだきちんと定義され、明文化されていませんでした。また、「用語リスト」もレビュワー目線で構成されており、お世辞にも「誰が見てもすぐに活用できる」ところまでは整えられていない状態でした。
テキストライティングの方針を定める
そこで、まずはテキストガイドラインにおける「テキストライティングの方針」、目的を定めました。
ショップオーナーの皆様だけではなく、これからショップを開設しようと検討している方、BASEのプラットフォームを利用したショップでお買い物される購入者、購入を検討している方をふくめ、BASEのタッチポイントに触れる可能性のあるすべての方を対象に、伴走者としてどんなテキストコミュニケーションであるべきなのか、という観点・視点がベースとなっています。
テキストライティング方針の対象範囲の明文化
また、現段階における「対象とする範囲」「対象としない範囲」も定めています。
2021年の段階において、プロダクトおよびプロダクトに付随するDBC(管理画面のお知らせカード)、メール、自社メディア(BASE活用方法などの記載された記事)などを対象範囲とし、メディアの属性によって受け取り手がキャッチできる情報や、印象に差分が発生しやすいSNS、広告などは、対象からあえて外しています。あくまでも、ユーザーの行動を促す短い文言「マイクロコピー」および「マイクロコピー」を支える屋台骨としての最低限のテキスト、にフォーカスしています。
正誤が検知できる、DB化されたガイドライン
そして、来たるべきDB化を念頭に、項目自体をあらためて精査、正誤表にすることにより、正以外を検知できるような作りにしました。
テキストガイドラインとして「漢字・ひらがな」「カタカナ」「記号」「数字・単位・日付」、また用語集として「サービス正式名称」「BASE固有の用語」「用語」、マイクロコピーは用途別に「ボタン・リンク」「エラー・バリデーション」「フラッシュメッセージ・トーストメッセージ」「警告メッセージ」「ダイアログ」と、使いやすく分類し、検索性を高めました。
定形メッセージのテンプレ化による、メッセージ・デリバリーの高速化
さらに、よくある定形のメッセージに関しては、使い勝手を最大化するため、テンプレートも用意しました。
ウェビナー告知やApp新機能紹介など、ある程度フォーマット化できるものをテンプレート化することで、毎回イチからテキストを起こさなくてもよいように、新しい情報をターゲットに最速でアナウンスできるようになりました。
これから
そんなわけで、昨年同様、すべては現在における仮説でしかないことを前提に、「運用ガイドライン」「用語リスト」のアップデートとさらなる活用策を模索してきた2021年。すべては、BASEというプラットフォームを通して、ショップオーナー様の皆様やお客様の叶えたい願いを実現するために。2022年のBASEにも、どうぞご期待ください。