
この記事はBASEアドベントカレンダーの一日目の記事です。
こんにちは!BASE株式会社で開発担当の役員をしている、えふしんです。
僕も今、BASEグループ全体を視野に「AIを経営資源としてどうアップグレードするか」を日々考えています。
2025年の締めくくりにふさわしく、 今日は“生成AIの憂鬱”について書いてみたいと思います。
AIツールが乱立する時代に、企業は何を選び、どこから撤退するべきか
2024年から2025年にかけて、企業のIT環境は一気に騒がしくなりました。
Slack に AI がつき、Notion に AI がつき、 Google に Gemini が載り、 Microsoft は Copilot を標準にし、 そして OpenAI は ChatGPT Enterprise を大々的に展開し始めています。
どのサービスも「今度こそ、これ一つで生産性が劇的に上がります」と主張する。しかし、企業の中に身を置いていると、そんなに単純な話ではないわけです。
Enterprise SaaSは、Enterpriseプランなどの高額なプランにAI拡張機能を載せています。これは数年後のAIプロダクトの風景では多分ありえない光景で、「あたりまえのAI時代」の前段階が故に高付加価値機能として置かれていると考えます。
もちろん、これはAI発展のストーリーの1ページで、OSSだって最初からOSSが生まれてくるのではない。プロプライエタリな製品を大企業がお金を払って普及させてくるからこそ、クローンとしてOSS化して多くの人が使えるようになり世界が拡がるというのは、ここ数十年のITの歴史ではないでしょうか。Linuxを使うユーザーが、インストールされている素敵なライブラリ一つ一つに適切なアウトカムを認識して使っているなんてことはないわけです。
だからと言って、この流れを無視して、ある意味フリーライドできる時が来るまで待つのも違うと思ってしまうわけです。これぞAIバブル。
この流れをどう乗りこなしていくか。未来と現状のギャップ。発展途上の過渡期だからこそ、“生成AIの憂鬱”が広がっています。
AIの導入はワクワクより「疲労」のほうが先に来る
Slack AI を買うべきか? Notion AI の方が効果が高いのか? Copilot や Gemini はどうする? ChatGPT Enterprise を入れるべきか?
気づけば、どのSaaSも「AI検索できます」「自然言語で仕事ができます」と言い始め、企業はコア実装である生成AIが類似なものであろう複数のAI機能に同時に課金するような状況に追い込まれている。
こうした“AI疲れ”は、技術的な問題というより、意思決定する側の負担が大きすぎるところに原因がある。導入判断だけでなく、撤退判断がもっと難しい。
導入時には派手に謳われた生成AI機能も、いざ組織に入ってしまうと、多少期待外れだったとしても「使い慣れたツールをやめたくない」という声が必ず出る。生成AIが汎用的が故に、特定のユースケースが恩恵を受けてしまったところから、引き剥がすのは難しい。
その結果、企業の中には“サンセットできないツール”が静かに積み上がっていく。
意思決定者は、ここまで予測し、ある意味非情とも言える決断を覚悟しないと入れられません。それ故に撤退基準の仕組み化が必要という考え方もありますね。
なぜAIツールがこんなに乱立してしまうのか
理由は単純で、各サービスが「社内で最初に質問される場所」を狙っているからだと考えます。
Slack は会話の中心にいる。
Notion はナレッジの中心にいる。
Google はドキュメントの中心、Microsoft はメールと会議の中心。
そして OpenAI は「生成AIそのものの中心」にいる。
それぞれが「うちをAIの入口にしてほしい」と主張し、結果として企業側は、複数の“AIフロントエンド”と向き合わざるを得なくなる。
いずれ企業毎の重要な情報が集まっているコアとなるAIが中心となり、周辺のフロントエンドにさまざまなツールが存在する構造になるかもしれないが、今はまだ早い。
AI導入の本質は、生産性やコスト削減だけではない
よくAI導入のメリットは「業務効率化」「コスト削減」と語られる。 もちろんそれも重要だが、2025年現在の企業にとって、もっと重要な価値がある。
それは 新人のレバレッジではないでしょうか。
生成AIを使うと、まだ経験が浅いメンバーでも、会話ログからプロジェクトの背景を掴んだり、文章の下書きを素早く用意したり、技術的な不明点を自分で解消したりできる。
結果として、組織は「人を増やさずに回る領域」を増やせる。 (人員削減という言葉は使わないが、チームが肥大化しないという“健全さ”を保つためにAIは効く)
この“レバレッジ”は、AI導入における一番の価値だと思っています。
ソーシャルではシニアの方が恩恵を受けて、新人が採用されなくなったり入り込む余地がなくなるんじゃないかと言われているが、僕は必ずしもそうだとは思っていません。
「生成AIの憂鬱」を超えるために、企業がすべきこと
AIツールは導入しただけでは価値になりません。組織文化と技術構造が噛み合って初めて成果につながります。
導入でも撤退でも重要なのは、「どのレイヤーでどのAIが本当に必要か」 を冷静に見極めること。
Slackでのキャッチアップには Slack AI が向いている。
会社ナレッジには Notion AI が向いている。
横断的な調査や下読みには ChatGPT Enterprise という選択肢もあるが、何をどこまで統合するかは組織の成熟度次第。
AIの時代は、ツールが増えること自体よりも、“どれを選び、どれを手放すか”の判断 が企業を悩ませる。
引き続き悩み続けます。皆さんのご意見もお聞きしてみたいです。
おわりに
生成AIによって、働き方も役割もこれから大きく変わっていきます。AIのセンスと自分の専門性を掛け合わせて、新しい価値をつくれる時代です。
BASEグループでも、そんな環境に一緒に取り組んでくれる仲間を探しています。もし興味があれば、採用情報もぜひ覗いてみてください。