BASEプロダクトチームブログ

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新任エンジニアリングマネージャ(私自身)を支えてくれた本と言葉

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この記事は、「BASE Advent Calendar 2018」の3日目の記事です。

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前の日id:yaakaito でした。Suggested change、便利ですよね。プルリクエストのレビューであまり重要ではないけれど気になる些細なコメントをするかどうか迷うというときに、悩まずにコメント代わりにパッチをサクッと送れるので、レビューに関わる人たちみんなが幸せになれるすごく良い機能だと思いました。ガンガン使っていきたいです!

3日目の今日は、エンジニアリングマネージャを担当している加賀谷が、「新任エンジニアリングマネージャ(私自身)を支えてくれた本と言葉」と題して、いくつか紹介していきたいと思います。

駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する

https://www.amazon.co.jp/dp/4121504933/

私は2018年、エンジニアのグループマネージャとして活動してきました。それまではサーバサイドエンジニアとして、アプリのバックエンドを作ってきました。なので、まずはマネージャとは何をすればいいのか?というところからのスタートでした。そんなときに救われたのが人事をしている同僚の言葉と、その時にオススメされたこの本でした。

「例えるなら、サッカー選手から管理栄養士へのジョブチェンジです。加賀谷さんは今までサッカー選手としてメンバーとともに試合に出て、時に自分で点を取り試合に勝ってきました。これからは管理栄養士としてチームを勝たせて下さい。」

選手ではないことはまだ受け止められたのですが、チームの管理栄養士です。まだ、監督だったら戦術をどうしようとか、直接ボールを蹴らなくてもまだ試合を動かす術があります。それもできません。試合(開発現場)からかなり遠いイメージを持ちました。

結果的に「サッカー選手から管理栄養士へのジョブチェンジ」という比喩が、すごくしっくりきました。本の中で語られていた、マネージャの仕事 = Getting things done through others(他者を通じて何かを成し遂げる仕組みをつくること)とリンクしたからです。

手を動かさなくていいのか。自分でコードを書いた方がはやいのでは。その葛藤、分かるよ。というところから始まり、マネジメントとはなんぞや、全部並べるとこういう仕事がある、ただいきなり全部やらなくていいんだぞ(むしろやれないし、今まで周りにそんなマネージャいなかったでしょ)、これからマネージャになる君とその周りにはこういうことが起きるぞ、だからこうやって乗り越えていこうー。

少しチクっとするけどこれから現れる症状を和らげてくれる、ワクチン接種のような優しい本です。

エンジニアが「明日からマネジメントして」と言われたら – FiNC Engineering Blog

https://medium.com/finc-engineering/12908151a41e

BASEのプロダクトマネージャーは思想を持って戦略を立て、何を作り何を作らないのかをずっと意志決定し続けています。ディレクターはプロジェクトチームが最速で目的達成するために、やりたいことを具体的な戦術として言語化とタスク化し、チームの今とこれからの課題を明確にして優先度を決め進捗を管理しています。

そんな中、具体的な数値目標をOKRとして設定して日々追っていく事業系グループのマネージャと、私が担当しているエンジニアのグループのマネージャでは少し違うような気がしていました。グループ単体で達成できるようなOKRの設定が難しく、具体的に何をマネージメントするのかがまだピンとはきていませんでした。

Getting things done through others、だとしたらエンジニアのグループのマネージャとして何をすればいいのか。迷っていたときに、こちらの記事と図を見てすごくしっくりきました。

私がやるべきことは、この図の中のピープルマネジメントでした。各メンバーが活躍できる場所を整え、フロー状態に持って行くのです。そのためにまず、プロダクトマネージャーと密にコミュニケーションを取り、立ち上げるべきプロジェクトの検討とアサインを考える必要がありました。そして、我々が向かう目的地と次の電柱の場所が見えるように目標を咀嚼して伝え、メンバーにかける期待を上司や役員とすりあわせた上で伝えること、プロジェクト内のメンバーが健全な対話と共同作業ができているか見続けて、お互いの期待のズレがないかすりあわせることが仕事のうちの1つと考えました。

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

https://www.amazon.co.jp/dp/4822255646

BASEでは目標設定のフレームワークとしてOKRを導入しています。各マネージャが全社OKRを因数分解するようにOKRを設定します。OKRとはなんなのか、良いOKRとはを知るためにはこの本が読みやすくて良かったです。茶葉を販売する架空のスタートアップに様々な困難が起き、エンジェル投資家のすすめでOKRを導入したがうまくいかず、そこからだんだんと変わっていくストーリーにも親近感が持てました。

Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか

https://www.amazon.co.jp/dp/4873116309

優れたソフトウェアはチームで作る、だとしたら優れたチームはどうすれば作れるのか。ソフトウェア開発はチームスポーツであり、技術と同じように人を考えることが大事。謙虚(Humility)、尊敬(Respect)、信頼(Trust)の3本柱を身につけよう、という本です。マネージャになって読み返したのですが、自分がいちエンジニアの時に読んだのとは見え方が全く異なっていました。1章に書いてあるうちの、優れたプロダクトを作る上で必要なプロセスの一部である、建設的な批判の仕方と受け入れ方、失敗からの学び方、集団のエゴを考える大切さについては特にです。

採用基準

https://www.amazon.co.jp/dp/B00B42SX70/

採用基準

採用基準

  • 作者:伊賀 泰代
  • 発売日: 2012/11/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

リーダーとマネージャの境が分からなくなってきたときに気づきを与えてくれました。 リーダーは引っ張る人でも何でもなく、チームの使命を達成するために必要なことをやる人のことで、そのリーダーが持つ問題解決リーダーシップは、メンバー全員が持つべき。その方が高い成果を生み出せるチームになる。なぜなら、お互いに背中を任せた上で何をすべきか自発的に動けるからです。

Team Geekにも書いてありましたが、時にマネージャはリーダーであることも期待されますが、リーダーは必ずしもマネージャである必要はないです。マネージャはメンバーのリーダーシップを育んでいくことで、よいチームになりプロダクトにより大きく寄与できるのではないかと思います。

エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方

https://www.amazon.co.jp/dp/4873118026

エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方

エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方

  • 作者:Roy Osherove
  • 発売日: 2017/05/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

同時に複数のエンジニアグループのマネージャをさせていただいたのですが、時にグループごとに課題がちがい、同じ振る舞いではうまくいかないことを学びました。この本ではチームの状態を、サバイバルフェーズ、学習フェーズ、自己組織化フェーズ3つで定義し、それぞれのフェーズでとるべきリーダーシップの方法を紹介しています。

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法

https://www.amazon.co.jp/dp/4478069786

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法

  • 作者:本間 浩輔
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

メンバーと定期的に1on1をすることになり、1on1ってなんぞ?と読み始めた本です。マネージャになって最もお世話になった本かもしれません。

そもそも何を目的としてどうやったらいいかを良く理解していなかったので、この本のまんま通りにやってみて場数をこなすところから始めました。90度に近い配置で座り「最近話したいこと話せてますか」と話をしてみるところからでした。

最初は全くうまくいきませんでした。何を話していいのか分からず、場は沈黙ばかりでしたし(最初の頃、その沈黙が経験学習を促すために必要と勘違いもしました)、メンバーには1on1の必要性すら届きませんでした。

1on1は1回あたり30分、頻度は多いときは1週間に1度行っています。話している内容をMarkdownでメモでとりながら話し、最後に必ずマネージャにできることがないかリクエストの確認をします。1on1の最後にはメモをSlackのDMで本人だけに送り、気づきの確認と、次のアクションの確認をします。もらったリクエストはその日のうちに行動して、どうなったかを本人に連絡しています。

1on1のメモはMacのメモツールのDayOneでとっていたのですが、そのメモを数えたら311回分ありました。1on1をしていく上で大切だと思った準備や質問がいくつかできてきたので、それはまた別の機会に紹介したいと思います。

Getting things done through others、自分が直接携わらないサッカーの試合を勝利に導く上で、1on1はマネージャの強力なツールの1つだと思います。いいプロダクトを作りショップオーナーの支援につながる事が上のサッカーの試合の勝利だとすると、そのためにはチームメンバーがそれぞれ活躍していて、高く評価されていることが必要です。

エンジニアがやりたいことやできることの円と、プロダクトづくりでやりたいことの円があったとき、両方の円が重なったところが組織と個人の課題や目的が一致したところで、メンバーが活躍できることと考えることができます。なので、メンバーが活躍するためには、この両方の円を近づけていくように整えていく事がエンジニアリングマネージャの仕事の1つかなと、今は思います。また、両方の円を大きくすることでも重なる面が増えるので、こちらも仕事の1つと考えています。

これがエンジニアリングマネージャとしてのレバレッジの効かせ方のひとつ、自身のアウトプットの与える影響範囲を広範囲に及ばせる、ということなのではないでしょうか。

全然別の話ですが、日々1on1をしていくなかで金八先生やルーキーズの川藤先生を思い出しました。赴任してきていきなりみんなの前でああしようこうしようと理想を語ったところで、次の日皆がそれぞれの居場所を見つけて充実した顔をしている卒業式のようにはならないわけです。ドラマで1話ごとに1人と向き合い、強みと課題を見つけて成果を出せるように行動変容を促すようにサポートし続ける姿勢はマネージャとして見習わなければならないと思いました。

今年1年、気付けば1on1を通じてたくさんの経験学習をさせてもらっていたのは自分のほうでした。メンバーには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

明日は id:khigashigashi です。お楽しみに!

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