こんにちは。BASE BANK株式会社 Dev Division にて、 Software Developer をしている東口(@hgsgtk)です。私のいる開発チームでは、アジャイル開発の考え方・取り組みを取り入れています。アジャイル開発の導入については、「小さなチームが始めたアジャイル開発」という資料を公開しています。
今回は、アジャイル開発において、重要な振り返りについて、Mad Glad Sad(喜、怒、哀) というレトロスペクティブ(振り返り)のワークを紹介したいと思います。
TL;DR
- Mad Glad Sad(喜、怒、哀)は、感情データを集めるためのワーク
- イテレーションで起きた、喜んだり、怒ったり、哀しかったりした時間やイベント、を書き出していくイベント
- 素直な感情ベースでイベントを振り返ることで、 "理性のフィルター"で見つからない潜在的課題をチームが見つける きっかけになる
Mad Glad Sad(喜、怒、哀)とは
レトロスペクティブのワークの一つです。感情データを集めるために使用する取り組みです。このワークは、「アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き」で、データを収集するアクティビティとして紹介されてます。
このワークでは、イテレーションで起きた、喜んだり、怒ったり、哀しかったりした時間やイベント、を書き出していきます。書き出されたそれらのイベントを深堀りしていきながら、グルーピングしていきます。
「アジャイルマニフェスト」では、 プロセスやツールよりも個人との対話に価値を置いている ことを宣言しています。
また、「More Effetive Agile ソフトウェアリーダーになるための28の道標」では、ソフトウェアチームのEQ(Emotional Intelligence、感情知性)向上の重要性を示しています。
自分の感情の状態と他者の感情の状態によく注意し、感情をうまくコントロールし、他者との良好な関係を築くことは、技術職メンバーにとってプラスに働く可能性がある。
チーム開発において、自己・他己の感情に向き合うことは、個人との対話に価値を置くアジャイル開発の価値をより引き出すために重要と言えます。
Mad Glad Sad(喜、怒、哀)は、そんな自己・他己の感情に向き合うきっかけとなります。
オンラインワークにmiroを用いる
2020年7月8日現在、WFH(Work From Home)での業務のため、オンラインでのレトロスペクティブを行っています。オンラインでのコラボレーションツールとして、miroを使用しています。
miroには、テンプレートがいくつか用意されていますが、その中に「Retrospective Mad/Sad/Glad」というテンプレートがあります。miroで同じく実施してみる場合、こちらのテンプレートを使うと手軽に始められそうです。
実際に実施したワーク
実際に、本ワークを実施した際のmiroのボードです。
(中身はお見せできないのですべてxxxxになっています。「実際にどういう話があったの?」と気になった方は、お気軽にカジュアル面談などでお話しましょう...!)
書き出しやすいように、Mad Glad Sadは、次にように翻訳していきました。
- Mad: イラッとしちゃったこと
- Sad: 内省したこと
- Glad: 楽しかったこと
書き出されたイベントは、それぞれ深堀りしていくなかで、チームにとっての「やっていったほうがいいこと」が見つかってくるので、それらは"Action Item"とつなげています。これは、「アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き」で紹介されている深堀り質問例のひとつ
次に行うべきステップは何か?
に対する議論の結果をカードとして言語化しています。
どういう効果があったか
言語化しきれていない生の感情データが浮き彫りになる
よく用いられる振り返り手法としては、KPT(Keep Problem Try)がありますが、人によっては個人的な課題を、あげることをためらってしまうことがあるかと思います。たとえば、「個人的にはこの作業はやらないといけないことがわかっているが、ちょっとしんどい」や「他チームとの調整において、ちょっともやっとした」といったものが例で挙げられます。
こういった課題は、論理的に言語化しきれていないものだったりするので、チームのProblemとして上げづらいこともあるでしょう。
感情ベースのデータ収集であることがワークとして明確なMad Glad Sadは、こういった発生イベントを明らかにしてくれます。
深堀りしていく中でチームとして取り組むべき潜在的課題が見えてくる
浮き彫りになったイベントに対する感情データに対して、深堀りしていくなかで、チームとしての潜在的課題が見つかってきます。
たとえば、「アルゴリズム設計の心理的負荷が、チームで背負いきれていない」、といった課題がワークを通じて発見されました。
KPTを重ねてきた中では明らかになっていなかった課題だったため、感情データに着目するこのワークが、潜在化された課題を見つけるきっかけになりました。
最後に
チームの取り組みを振り返るワークの一つして、まだ試していなければ試してみてはいかがでしょうか。なにか新しい自分たちが見つかるかもしれません。