はじめに
こんにちは!BASE株式会社でPay IDチーム プロダクトマネージャーをしているbunです。
Pay IDは、BASEで作られたショップでのお買いものを楽しむためのショッピングサービスとクイックでスムーズな決済機能を提供しています。
去年1年を振り返ると、多くの失敗や思うようにいかないことが重なり、そのたびに内省をする時間を持つことが多かったです。その過程で強く大事だと感じたことは、プロダクトマネジメントで突き詰めるべきは「誰がなぜ幸せになるのか」を見失わないことです。
これまで数値と論理を武器にキャリアを積んできましたが、プロダクトづくりにおいてはそれらが最優先事項ではないシーンが多いことを痛感しました。この記事では「数値や論理」をプロダクトづくりの軸とすることの功罪を再確認し、どのように活かすのかを自分なりに整理してみたいと思います。
数値
定量分析とはAかBのどちらが優位かを明確に示し、チーム全体の意思決定に納得・正しさ・早さを持たせることができます。膨大な情報の中から「見るべきポイント」を定義し、そこにフォーカスを当てることで関係者全員が判断基準を共有できることが数値の役割なのではないかと考えています。
しかし、この「明確化」の裏側には、「見ないことを決める」ということでもあります。つまり、明確な基準を設けて特定の指標を追うということは、それ以外の要素に注意を払わない、あるいは軽視することと表裏一体です。結果として、数値ベースの分析に特化しすぎると気づかないうちに視野が狭まってしまうことが往々にしてあります。
事例:キャンペーンクーポン
売上を短期的に押し上げるために「クーポン利用率」という指標を作ったと仮定します。定量的な目標を設定し、クーポンがどれだけダウンロードされ、何%の利用率に達したかをトラッキングすることで、クーポン取得数や利用数を着実に増やすことができ、売上も一時的に上昇し、データ上は「成功」と言える状態が生まれます。一方で「クーポン利用率」という特定の数値指標に照準を合わせることで、定量化しにくいが本質的に重要な要素が視界から消えてしまいます。
- ブランドイメージ:クーポンの乱発により、「安売りして当たり前」というイメージが定着し、長期的なブランド価値が下がる可能性がある。
- 顧客ロイヤリティ:クーポンがなくなった瞬間に離反する顧客が増え、価格以外の価値が見えづらくなってしまう。
あくまで一例ですが数値分析の強みである「わかりやすさ」と「意思決定の明確化」は、同時に「多様な観点の切り捨て」をもたらしていることになります。
数値目標の達成には成功したとしても、“そこには映らない本質”を見落としている可能性があります。定量指標が示す「正しさ」はあくまで条件付きのものであり、広い視野を持たないとプロダクトが壊れてしまう難しさがあります。見たいものだけみて、数値ベースで施策や行動をすべきと言っている場合はかなり危うい状況なのではないかなと思います。
論理
論理は既に知っている材料や情報を元に、筋道を立てて再配置するための枠組みのことだと考えています。一見すると失敗のリスクを低減してプロセスを合意形成しやすくする一方で、「既存のゲームルールの上を歩むだけ」という側面でもあります。
そのため、顧客の想像を超えない機能は驚きや感動のような心を動かすようなことはできず、大きな結果は生み出せない可能性が高いのではないかと考えています。
誰もが納得する形に落とし込もうとするとどうしても「定量的インパクト」「成功確率」といった言葉で企画やアイデアを語りがちになり、結果的に競合他社との「差別化」も難しくなります。
説得力を高めるための“客観的な説明”を重ねれば重ねるほど、いつの間にかユーザーの顔や感情が薄れていきます。
論理的整合性を高めることは大切ですが、プロダクトを使うのは「人」であり、彼らがどのような喜びや悩みを抱いているかを深く理解することこそが核心ではないかと考えています。
補助線を引くための道具
プロダクト開発でまず問うべきは「誰がなぜ幸せになるのか」から始まるべきであり、数値や論理はこの問いに答えるうえでの「補助線」にすぎないのではないかなと考えています。施策の検証結果や仮説を得たり帰納的に考えることに限定すべきだと思います。また、企画段階での施策の正しさは数値と論理ではなく顧客が持つイシューの解像度の深さと実行結果で判断すべきなのではないかなと考えています。
道具の扱い方
- 数値に左右されすぎない:数値は短期的成果を測る指標にすぎない。視野を広く持ち、定量化できない部分にも目を向ける。
- 論理で固めすぎない:試作や実験のフェーズでは、“熱量”や“直感”も大切にし、顧客の感情や想定外の行動に目を向ける。
- 哲学・ビジョンを明確に持つ:「誰が、なぜ幸せになるのか」を常に問い続けることで、数値と論理に翻弄されない軸を持つ。
最後に
数値や論理はもちろん大切ですが、そこに顧客に憑依して“自分たちが本当に欲しい未来”を実装するバイアスが入っていなければありふれた機能しか生まれないのではないかと考えています。たとえよくある機能でもちょっとした気遣いがあるかどうかに差が現れてくると思います。
また、顧客のインサイト(本人が気づいていない隠れた欲望)に仮説を立てて不確実性の高いプロダクト開発をするには試行錯誤しながら素早く検証していくことが欠かせないと痛感しました。
今年は強い熱量や“バイアス”に引っ張られることをポジティブに捉えながら、実際に手を動かし、早くライトに実験し、失敗し、そこで得た学びを積み重ねながらプロダクトマネジメントをやっていきたいと思っています。