BASEプロダクトチームブログ

ネットショップ作成サービス「BASE ( https://thebase.in )」、ショッピングアプリ「BASE ( https://thebase.in/sp )」のプロダクトチームによるブログです。

AI機能開発とインボイス制度対応を同時にやったら、意外と似ていた

こんにちは。BASE株式会社でプロダクトマネージャー(以下PdM)をやっています、船坂です。

この記事は BASE Advent Calendar 2023 の13日目の記事です。

アドベントカレンダーもあっという間に折り返し地点、12月は日が経つのがあっという間ですね。

さて、この記事では、自分が今年関わったプロジェクト(以下PJ)の中から、特に特徴のあった2つのPJ、「BASE AI アシスタント」アップデートと、インボイス制度対応についてご紹介できればと思います。

前者はBASEのAI関連機能の総称である「BASE AI アシスタント」の機能追加という整理ですが、実質的にはAIを用いて新たな可能性を探る、新機能の開発プロジェクトです。どちらかというと輝かしいプロダクト開発的な側面が目立ちます。

後者は、ECプラットフォームである「BASE」上で起こるありとあらゆる取引をインボイス制度に対応させるという、対応必須な法対応かつ影響範囲の広い地味で大変なプロジェクトです。どちらかというと縁の下の力持ち的な作業となります。

これらのPJ、正反対かと思いきや、PdMとして両PJに参加していると似ている側面も持っていました。

それらをご紹介しつつ、PdMとしてやっていたことを書きながらふりかえっていこうと思います。

AI機能開発とインボイス対応、2つの共通点

これらの2つのPJ、大きくは以下の2点が似ていました。

  1. 要件を定める際に、制約が発生する
  2. リリース時期が非常に重要な意味を持つ

それぞれについて詳しく説明します。

要件を定める際に、制約が発生する

各PJにおいて、自分はPdMとして作るものを決める立場で参加するわけですが、どちらのPJにおいても、要件を定める際の外的要因の影響力がとても大きかったと感じました。

AIの場合:できるかできないかはAI次第でもある

AI機能においては、目下の施策の要件を考えるためには「現時点でAIにできるのか」「それは自分たちでもできるのか」が非常に重要になってきました。PJ初期では、企画を作ったあとにAIを触ってみると、想定していたよりもAIを利用してアウトプットのクオリティを上げることができず、現状では諦めるといった決断をしたアイデアも発生しています。(画像生成系など)

これまでの機能開発においてはエンジニアが「できそうだ」と想定できれば、それはほぼほぼ実現できたわけですが、AIをくみこんだ機能開発では、ソリューション実現の根幹にAIがいるため、AIも含めてクオリティを担保できなければ、リリースまで持っていくことができません。

企画を検討する中で、早い段階でAIに指示を出すためのプロンプトを作成し、どこまでAIができそうか、アテをつけながら企画することが非常に重要でした。

インボイスの場合:インボイス制度が絶対的な存在である

言うまでもなく、インボイス制度対応の要件に影響を与えるのは、インボイス制度です。BASEにおけるインボイス制度対応の内容が決まるまで、大きく下記のような流れで進行していきました。

  1. インボイス制度概要を理解する
  2. BASEにおける全ての課税取引を洗い出す
  3. BASEに関連する部分のインボイス制度の内容を更に詳しく理解する。法的に定められた「しなければならない」「することが望ましい」を把握する
  4. 「しなければならない」「することが望ましい」ことの実装方法を調査(※)し、ユーザー体験を考慮しながら各取引のインボイス対応方針を定める。 ※ここでの調査とは例えば「メールでインボイスを送ることは認められるか」など、法的に認められる実装方法を調査すること

感想

見てきたように、どちらのPJも、PdMはそのドメインの知識をかなり深くまで知ることが要求されました。というより、筋の良い施策を考えるためには、制約を生み出す要因について詳しく知らないと、定義の難しい領域のプロダクト要件を的確に設定することができないのだと感じます。

外的制約がたくさん発生する複雑な領域こそ、PdMを設置する意味が出て来るんだなと改めて感じました。

リリース時期が非常に重要な意味を持つ

AIの場合:リリースタイミングでのAIの話題性

生成AIの劇的な進化が注目を集めて以来、様々な企業がAI機能をリリースしています。現在は、毎日のように新たなAI関連ニュースを目にします。

BASEとしては、今年の4月に出した「BASE AI アシスタント」では、まずはとにかく早くリリースしてAIの流れにしっかり対応しにいきました。逆に、この間の12月6日に新たにリリースした新機能3つは、本当に価値のある機能を提供することを目指して、スピード感は持ちつつも、確かに価値を感じてもらえるであろう機能を検討してリリースしました。

社内では、早期に一つずつリリースする方向性なども含めて様々な議論を行いましたが、結果的には、「BASEらしく、かんたんに使えてしっかり価値を感じられる」機能をいくつかまとめてリリースすることを優先した形です。

AIの話題性が刻一刻と変わる状況を見ながら、どのような単位でいつリリースするか、検討した結果が今回のリリースとなっていました。

インボイスの場合:どのような状態でXデーを迎えるか

インボイス制度対応については、2023年10月1日のインボイス制度適用開始日は動かないので、それ以前でどのようなタイミングからなんの機能を提供するか、実装順やリリース日の決定、事前告知告知はどのように行うかを非常に重視しました。

BASEでは、インボイス発行記録を保持するDBの一ヶ月分のデータをまるっと経理のデータと突合して、金額のズレがないか(=実装漏れが無いか)のテストをする必要がありました。これは実装後、1ヶ月間の集計期間をおいたうえで初めて実施できるテストだったため非常に期限がシビアでしたので、各種取引において、DB書き込みまでの作業のみ先行して全て実施してから、突合テスト対象外の部分の実装を進めるなど、開発作業順を工夫しました。

また、今回はBASE株式会社自身だけではなく、BASEをご利用のショップもインボイス制度に対応できるようにしたので、制度開始ギリギリでの機能リリースではなく、インボイス制度対応の準備ができる期間を想定したうえでの機能リリースとなりました。

インボイス制度対応のために必要な「適格請求書発行事業者の登録番号」だけは早めに入力して貰わないと制度開始日から自動でインボイスを発行することができないため、登録番号を入力してもらうフォームだけ先行リリースして設定期間を設けるなど、どの機能がいつまでにあれば全てのショップが10月1日に対応できているのか、時期を調整しながら制度開始当日を迎えました。

感想

これらのプロジェクトはGo-To-Marketの視点が非常に重要で、「要件を決めたら、あとは頑張って作って、でき次第出す」というようなシンプルなPJではなかったのが特徴でした。PdMとしてはどのタイミングでその機能を提供することで価値が最大化されるのかを真剣に考える必要があり、良い経験になりました。

ブランディングチームやお問い合わせに対応していただいてるチームなどと連携しながら、どういう状態を目指してリリースするかをすり合わせるのが重要だと改めて感じました。

まとめ

今回はAIとインボイス対応という、一見すると正反対の2つのPJの共通点として、

  1. 要件を定める際に、制約が発生する
  2. リリース時期が非常に重要な意味を持つ

というよく似た側面をご紹介しました。

自分はPdMとして色々なプロジェクトに参加していると、ついついその施策ごとに異なる人格を作ってしまいがちというか、意外と学習したことを転用できると気づかなかったりするんですよね。

こうやってあとから共通点を抽出してみると様々なPJに転用できるような汎用的なナレッジが見つかって、いいふりかえりになるなと感じました。

PdMは役割の定義が難しい職種の一つだと思いますが、色々なことを経験できるのは、魅力の一つでもあります。

様々なことに興味を持って、学習をしながらできることを増やしていくことに楽しさを感じる方は、ぜひプロダクトマネージャーというキャリアを検討してみて下さい!

そして、興味があればBASEも検討してみてもらえるともっと嬉しいです!

明日は @zan さんの記事です!お楽しみに。