BASEプロダクトチームブログ

ネットショップ作成サービス「BASE ( https://thebase.in )」、ショッピングアプリ「BASE ( https://thebase.in/sp )」のプロダクトチームによるブログです。

「BASE」テキストコミュニケーション・ガイドラインをアップデートする話

f:id:fujiimichiro:20201225105435p:plain
「BASE」テキストコミュニケーション・ガイドラインをアップデートする話

この記事はBASE Advent Calendar 2020の25日目の記事です。 https://devblog.thebase.in/advent-calendar-2020

こんにちは。 Product Management GroupでPJのディレクション、Design GroupでUXライティングを担当している藤井です。

ふだんはネットショップ作成サービス「BASE」やショッピングアプリ「BASE」の新機能および改善のディレクション業務をおこないつつ、「BASE」プロダクト全般におけるテキストの品質を向上させるUXライティングに取り組んでいます。

社内で「テキストコミュニケーションをアップデートしていこう!」と声を上げてから約2年。「BASE」のUXライティングは、現在ではこんな視点で、テキストにおけるデザインシステムともいえる「用語リスト」と「運用ガイドライン」を作成、運用しています。

◯運用ガイドライン・視点の一例

  • 既存の言葉を使う→ユーザーがふだん使っている言葉に合わせるべきであり、すでに理解されている表現があるときに、いたずらに新しい言葉を作り出さないようにする

  • 形を機能に従わせる→美しさ<機能。言葉のほうが伝わるのか、画像のほうが伝わるのか、目的達成のために効果的な方を選ぶ

  • ゴール・オリエンテッドである→その画面において必要な情報のみを、その都度提供する

また、タッチポイントごとの特性によって、テキストのコミュニケーションに求められるものも違うため、プロダクトの各タッチポイントで、最終レビュー担当者をそれぞれアサイン。管理画面やメールなどプロダクト全般で1名、ヘルプやFAQなどカスタマーサクセス視点で1名、SNS関連で1名、の体制で最適化を図っています。

あくまで暫定的なものだった、「BASE」のテキストコミュニケーション・ガイドライン

と、社内にもプロダクトにもじわじわと根付いてきたUXライティングですが、よくよく考えてみると、あることに気づきました。いまのテキストコミュニケーションの土台になっているガイドラインや視点って、会社のミッションや他社事例を参考にしながら、あくまでもその当時の仮説として設定したものだったなあ、と。

実際のところ、最近では社内でテキストレビューをフィードバックすると、「ここは漢字にしたほうがよくないですか?」「ちょっとしっくりこないです」「ルールとしては合っているかもしれないけれど、読みづらいかも」などの声もちらほら。

そこで、今一度あらためて「BASE」にとってのUXライティングとはなんぞや、を考えてみることに。

UXライティングって?

そもそも、UXライティングの定義とはどんなものなのでしょう?

ユーザーに愛着を持ってもらえるプロダクトにするために、プロダクト内で使われるテキストを定義して運用すること(出典:効果的なUXライティングのための16のルール)

従来、マニュアルやヘルプ、リリースノートなどで求められてきた、いわゆるテクニカル・ライティングで重視されていたのが<正しさ><簡潔さ><ロジカルさ>だとすれば、UXライティングとは、それに加えて<愛着を持ってもらえる>ことが重要な要素となっているようです。

求められる、<人間らしさ>

でも、<愛着を持ってもらえる>こと、つまり<人間らしさ>とユーザビリティのバランスって、とてもむずかしいですよね。多くの情報をすばやく明確に伝えようとすると、どうしてもかしこまってしまい、堅苦しい物言いになってしまうけれど、かといってなれなれしい言い回しも、ちょっと唐突に感じるかもしれない。

そこで、社内のメンバーに集まってもらい、ワークショップスタイルで<ボイス>=ブランドの声と<トーン>を定義してみることにしました。

ボイスとトーン、ボイスチャート

<ボイス>とは、ユーザー体験全体を通して感じられる、ブランドの理念を反映した言葉遣いのこと。 <トーン>とは、ユーザー体験の各部分における、言葉遣いの変化のこと。

たとえば、パートナーから電話がかかってくれば、それが自分のパートナーだということがその声自体でわかるし(ボイス)、声の調子でどんな内容なのかがわかる(トーン)、といったところでしょうか。

それを、みんなでキーワードを出し合って5つの要素を定義することで、「BASE」の<ボイス>と<トーン>の拠り所となる「ボイスチャート」ができあがる、という仕組みです。

  • Product Principle(プロダクトの理念)

 →プロダクトがユーザーに提供したい体験を表した言葉。ボイスチャートの土台になる。言葉を通してProduct Principleをユーザーに届けることが、ボイスの目標

  • Concepts(コンセプト)

 →とくに強調したいアイデアやトピック

  • Vocabulary(用語)

 →Product Principleを表す象徴的な言葉

  • Verbosity(言葉数)

 →言葉の多さ。情報を正確に、明確に伝えるために言葉を多くすることが適切になる場面もあれば、逆に言葉を少なくすることが適した場面もある

  • Grammar(文法)

 →話し言葉を主体とするか、簡潔な表現を主体とするか

かくして、こんなワークショップに

今回は、デザインチームをはじめ、ユーザーからのお問い合わせに対応するカスタマーサクセスチーム、ショップオーナーさんが使う管理画面のお知らせやメルマガ、SNS運用を担当するオーナーズサクセスチーム、プロダクトの企画や開発ディレクションを担うプロダクトマネジメント/ディレクターのメンバーをふくむ13名でワークショップを実施。 さまざまな立場から、Product Principle(プロダクトの理念)となるキーワードを軸にして、Concepts(コンセプト)、Vocabulary(用語)、Verbosity(言葉数)、Grammar(文法)がどうあるべきか、じつにバラエティに富んだ数多くの単語が付箋に記され、折り重なっていきました。

そして、1時間半におけるワークショップの参加メンバーのなかで、Principle(プロダクトの理念)として定義づけられたのは、次の3つのキーワードでした。

◯Principle(プロダクトの理念)

  • 個人をエンパワーメントする

  • 誰でも使える

  • 信頼感

そして、できあがった「BASE」プロダクト・ボイスチャート

Principle(プロダクトの理念) 個人をエンパワーメントする 誰でも使える 信頼感
Concept(強調したいアイデア・トピック) プロダクト作りに集中できる 専門知識がいらない みんなが使っている
Vovabulary(象徴的なことば) 寄り添う/力を与える/オーナーズファースト かんたん/シンプル/いつでもどこでも やさしい/あんしん
Verbosity(ことばの多さ) 「誰でも使える」ようにするために、専門用語や不要な形容詞、副詞を使わず簡潔に伝える 「信頼感」を持ってもらうために、誤解が生まれないように明確に伝える
Grammar(文体) 「信頼感」「誰でも使える」ようにするため、シンプルな表現を主体とする 「信頼感」「誰でも使える」ようにするため、シンプルな表現を主体とする

ワークショップを通じて見えてきた、「BASE」自身の多様性

興味深かったのは、出てきたキーワードの数々が、かならずしも「BASE」のコーポレート・ミッション「Payment to the People, Power to the People.」に紐づく単語だけではなかったこと。もちろん、<世界のすべての人に、自分の力を自由に価値へと変えて生きていけるチャンスを。あたらしい決済で、あなたらしい経済を。>という宣言から派生するキーワードもたくさんありつつ、たとえば<Webデザインの民主化><コロナ禍の状況におけるセーフティネットになる>など、ミッションのその先をも見据えているような言葉が飛び交うたび、自分の狭い視野だけで「BASE」を見てしまっているのだなあ、と痛感。同じプロダクトと向き合っていても、立場もさることながら、個によってまったく違った風景が見えているのは、とても新鮮な発見でした。

じつは、個人的にはこれが今回のワークショップのなかでの最大の収穫かも、と思っています。というのも、まさに時代と同じように、自分たち自身にとっても「BASE」というプロダクトのとらえ方には多様性があり、だからこそ、時代に合わせてPrinciple(プロダクトの理念)もアップデートしていくだろうし、テキストコミュニケーションもつねに進化を続ける必要がある、ということを、あらためて意識させてもらえたからです。

これから

そんなワークショップを経て、今まさに来年からすぐ運用に乗せられるように、2021年版の「用語リスト」と「運用ガイドライン」をアップデート中。もちろん、ここで定義された<個人をエンパワーメントする><誰でも使える><信頼感>という、Principle(プロダクトの理念)を表現するためのテキストの<ボイス>と<トーン>の在り方も、現時点での仮説でしかありません。2021年とはいわず、Day1で検証され更新されていくものとして、「BASE」プロダクト同様、日々進化させ続ける必要があります。

すべては、「BASE」というプラットフォームを使ってくださるショップオーナー様/お客様の体験を、さらに一つ上のステージへと導くために。2021年の「BASE」にも、ぜひご期待ください。