こんにちは。UIデザイナーの野村です。
前回に続き、デザインリサーチの取り組みについて述べたいと思います。
(デザインリサーチって何?と疑問に思った方は、前回の記事の「デザインリサーチとは」の項を参照いただけると幸いです。)
主に、社内で企画・実施したデザインリサーチワークショップについて書かせていただきます。
前置き・プロボノプロジェクトの参加(社外)
社内での活動を書く前に、その活動の下敷きとなったプロボノプロジェクトでの経験に軽く触れたいと思います。
(プロボノとは、大まかにいうと「ボランティアの社会貢献」のようなものです。詳しい意味はWikipedia記事などをご参照ください。)
2020年春ごろに、社外で実施されたデザインリサーチプロジェクトに参加しました。
プロジェクト概要・成果:
https://preview.studio.site/live/xNWYkmXqlB
一般の方を対象に、デザインリサーチの手法に則ってインタビューや分析を行う、というプロジェクトです。
テーマは「リモートワークを行う人の、仕事や生活の実態を探ること」であり、特定のプロダクトや機能について調査するようなものではありません。
このプロボノプロジェクトでは「リモートワーク実態」をテーマとしていたわけですが、これを「ネットショップ運営実態」に置き替えて、似た流れでリサーチを行ったら、BASEサービスの開発にとって有効な知見(ユーザへのより深い共感)を得られそうだと考えました。
継続的なデザインリサーチを検討
上記プロボノプロジェクトで得た知見と、商品オプションAppプロジェクトでのリサーチ試行経験(前回記事参照)を踏まえ、機能開発プロジェクトとは別の括りで定常的なリサーチプロジェクトを行う形が有効なのでは?と考えて、それを実践する方法を検討をしました。
定常リサーチプロジェクト案
大まかに、以下のような形を想定しました。
- 隔月か四半期ごとくらいの頻度で、有志を募って数名でインタビュー形式のリサーチを行う。インタビュー対象者数は5名程度か、多くても10名くらいが目安。通常業務に支障が出ない頻度・労力を意識する。
- 大テーマを「ネットショップ運営の実態や困りごとを探る」として、BASEの利用状況に限らず多様な角度からの情報を集める。
- 小テーマは都度、その時々で稼働しているプロジェクトに合わせてアレンジする。(例えば、「Instagram販売Appの改善プロジェクトが動いているなら、Instagramの活用実態について特にフォーカスする」というように。)
このような、インタビュー主体のリサーチプロジェクトの実施をひとまずの目標としました。
デザインリサーチワークショップ
書籍やセミナー等からある程度はリサーチインタビューのノウハウを得られますが、いきなり実ユーザへのインタビューを始めるのでなく、なんらかトレーニングをしておきたいところです。
また、私が1人でリサーチを実施して知見を蓄えても、チームとしてのデザインワーク向上には繋がりにくいように思われます。
周りから「何かよくわからないことをやってる」と思われながら続けていくのも心理的に辛いので、あらかじめ周囲からの「意義あることをしている」という共感を得られたら望ましいですね。
そんな想いから、まずは社内でワークショップを行うこととしました。
- 外部の専門家を講師に呼んで、トレーニングをしてもらう。
- デザインチームメンバーに参加してもらい、「何をしているのか」「どんな意義があるのか」について知ってもらう。
という二点を適えるべく、企画を進めます。
幸いなことに、書籍「デザインリサーチの教科書」の著者であるアンカーデザイン社の木浦さんと個人的な繋がりがありましたので、ワークショップ講師をお願いし、引き受けていただけました。
参加人数は14名で、4チームに分かれて以下のような流れでユーザインタビュー実施しています。
(オンラインで完結するよう計画しています。)
- DAY1(3時間):インタビュー設計
- 宿題期間(2週間):インタビュー協力者手配とインタビュー実施
- DAY2(3時間):分析・考察
【DAY1 設計】
【宿題・インタビュー手配&実施】
【DAY2 分析・考察】
ワークショップの成果物としては、デザインチャレンジ(課題発見)が10個と、課題解決案が20個程度作成されました。(以下、その一例です。)
- デザインチャレンジの例
- 課題解決案の例
インタビューを行うためのユーザ手配がなかなかに大変だったのですが、大変だった故に意義も大きかったように感じます。ある意味、ワークショップの中で最も意義ある部分だったかも知れません。
通常業務の中でユーザとの直接的な対話を行おうとしても、スケジュール的要因、費用対効果面等から、なかなか実行はしづらいものです。慣れないことを行うことへの心理的ハードルもあります。
今回「ワークショップの宿題」という形でデザイナーとユーザの直接的な交流の場を作れたことは一つの大きな成果でした。
ワークショップ実施後に参加メンバーから感想を募ったのですが、「楽しかった」「勉強になった」というコメントを多数いただいており、デザインリサーチに対してポジティブな印象を持ちつつ知見を得てもらえたようです。
「ショップオーナーになりたくなった」「ショップを開きたくなった」といった声も出ており、ユーザに対する深い共感を得られたことも窺い知れます。
ワークショップの成果と今後の継続
ワークショップの実施にて、以下の2つの目的を達しました。 - リサーチの計画から分析までの一連の流れを経験する - 社内メンバーにデザインリサーチ活動の内容と意義を伝える
次の段階としては、単発のワークショップではなく継続的なリサーチプロジェクトとしての流れを作るべく、計画・検討を進めています。
まとめ
社内でのワークショップ(および、その下敷きとなったプロボノプロジェクト体験)から、デザインリサーチの実施・進行についていくらか知見が身についてきました。まだまだ試行錯誤の必要を感じますが、規模を変えたり新たな手法を取り入れたりしつつ、リサーチ活動を継続していきたいと考えています。
また、ここまでの経験から、デザインリサーチ活動は開発プロジェクトの中に組み込むよりも、独立したプロジェクトとして行う形が弊社には向いてそうだ、という感触も得ました。
これらの知見・経験を活かせるよう、今後のプランを練っているところです。
定性リサーチ文化を根付かせるべく、いろいろ楽しく試していきたいと思います。